自家培養軟骨移植術とは
関節軟骨は、ヒザの動きを滑らかにしたり、ヒザにかかる負担をやわらげるクッションの役割を果たしています。軟骨組織には血管がなく、傷を治すための有効な細胞が少ないため、事故やスポーツで軟骨が欠けたり、剥がれてしまうと、自然に治癒するのは難しいと考えられています。
欠けた軟骨の治療法の中で、近年注目されているのが「自家培養軟骨移植術」です。
自家培養軟骨移植術にもいくつか種類がありますが、日本で公的医療保険の対象となっているのは、「外傷性軟骨欠損症」または「離断性骨軟骨炎」で、欠けた軟骨の面積が4cm2以上の患者さんです(変形性膝関節症は治療できません)。この治療法は平成24年7月に厚生労働省により承認され、平成25年4月より公的医療保険で受けられるようになりました。
「自家培養軟骨移植術」は、患者さんご自身の細胞を使うので、拒絶反応がきわめて少ないこと、少しの軟骨から細胞を増やすことができるので、広い範囲の軟骨が欠けた場合により有効であるなどのメリットがあり、治療後はヒザの痛みが和らぐことが確認されています。
リハビリテーションについて
移植が終わった約1~2週後からリハビリテーションがはじまります。ゆっくりとヒザを動かしていき、4週後から少しずつヒザに体重をかけていきます。 6週後には全体重をかけるトレーニングをします。ただし、軟骨の欠けた場所や大きさなどにより、リハビリテーションのスケジュールは変わります。
詳しくは再生医療ナビのウェブサイトをご参照ください。
PRPとは
多血小板血漿(PRP; Platelet-rich plasma)を用いた治療は、外来で患者様から血液を採取して、そこから血漿成分を抽出します。この血漿成分には組織の修復や抗炎症作用を促す成長因子を出す働きがあるとの報告が多数あり、患部に直接注入することで自己治癒力をサポートする治療法として注目されています。
欧米では20年以上前から普及していて、当初は口腔外科領域で顎骨再生療法として注目され、シワ伸ばしにも効果があるとして美容外科の領域でも広まっていきました。
整形外科領域でも、あらゆる運動器疾患への適用が研究され、論文や学会で発表されています。日本でも近年有名アスリートの治療などをきっかけに話題となり、専門外来が開設されている病院もあります。骨折や靭帯損傷などを受傷したトップアスリートを、一日も早く復帰させるという特別なニーズに応えるだけでなく、数千万人の患者さんがいるといわれている、変形性関節症に対する腫れや痛みの軽減(抗炎症効果)への適用も期待されています。
変形性関節症に対する治療法としては、運動療法、薬物療法、ヒアルロン酸の関節腔内注射などの保存療法が行われています。症状が進行すれば、骨切り術、人工関節置換術などの手術加療が行われますが、侵襲が大きく、特に若年者の方では社会復帰までに長期の休養を要するなどの問題点があり、疼痛を抱えながらも保存加療を継続されることが多いのが現状です。PRP療法は保存療法と手術加療の間を埋める新しい治療法として注⽬されています。
PRP療法のメリット
- 安全性が高い
患者様ご自身の血液から抽出するため、拒否反応、感染症のリスク、その他の副作用が少ない治療法です。 - 施術が簡便
外来で採血を行い、当院の専用機械を用いて作製を行うため、当日に注射を受けて歩いて帰ることが可能です。
PRP療法のデメリット
- 自由診療のため治療費は自己負担
公的な保険適用ができないため、自由診療となります。そのため、治療費は全額自己負担となります。 - 効果にばらつきがある
PRP療法はご自身の自己治癒能力に期待した治療法となるため、効果には個人差があります。
PRP療法を受ける流れ
- 説明・同意
医師からPRP療法に関する説明を行い、同意いただいた方に治療を開始させていただきます。 - 採血
当院の外来にて約25mlの血液を採取いたします。 - 加工
当院の専用機械を用いてPRPを作製いたします。作成には約30分~40分の時間がかかります。 - 患部へ注入
患部をエコーで確認後、作製したPRPを注入しPRP療法は完了となります。
PRP療法の料金
1か所投与 70,000円(税込み)
PFC-FDとは
近年、メジャーリーガーなどのスポーツ選手のケガの治療にPRP(Platelet Rich Plasma:多血小板血漿)療法が用いられ、注目を集めております。
当院で行うPFC-FD(Platelet-derived Factor Concentrate Freeze Dry:血小板由来因子濃縮物-凍結真空乾燥)療法は、患者さま自身の血液を採取し、PRPを抽出後に、さらに成長因子を豊富に含むPFC-FDに加工したものを患部に注射し、自己修復機能を促進する治療です。スポーツによるケガだけではなく、変形性関節症による疼痛軽減にも効果が得られる治療法です。患部に投与することで、痛みの軽減や損傷部の治癒を目指します。
PFC-FD療法の料金
- 1か所投与 150,000円
- 2か所投与(同日) 163,000円
- 2か所投与(別日) 175,000円
*感染症検査の結果、陽性の場合は投与を行えず、検査費用のみ患者様のご負担となります。(検査費用 27,000円)
PRPとPFC-FDの違い
PRPは自己血液を遠心分離して得られる血小板が多量に含まれた液体(多血小板血漿)のことですが、PFC-FDは自己血液からこのPRPから成長因子を取り出して凍結乾燥(フリーズドライ)したものです。このPFC-FDに含まれる成長因子が体内(患部)で組織治癒や炎症抑制に寄与することが期待されています。
PFC-FD療法に期待される効果
症状の改善
関節内で炎症を起こしているような状況では、PFC-FDを関節内に注入(注射)することで炎症を抑制、痛みや腫れの緩和が期待できます。その効果には個人差がありますが持続力があり、概ね3ヶ月から半年ほどと見られています。
この持続力を活かし、症状が抑えられている間に運動療法をおこない患部周辺の筋肉を鍛えることで関節への負荷を減らすことができるため、QOL(生活の質)の改善へとつながります。また、痛みが軽減することで運動がしやすくなり体重低下に成功すれば、さらに膝関節にかかるストレスが軽減する、という好循環を獲得できる可能性もあります。
現在もっとも活用されている疾患は膝に生じる変形性膝関節症です。腱炎といった他の運動器疾患でも効果が期待されており、スポーツ選手を中心に様々な治療に活用され始めています。
PFC-FD療法のメリット
- 安全性が高い
PFC-FDは患者様ご自身の血液から製造されるため、他人の組織を使った治療や薬物による治療と比べると、拒否反応や感染症リスク、その他の副作用が少ない治療と言えます。
もちろん注射特有の痛みはあります。また、稀に一週間程度の腫れが残ってしまう場合もありますが、速やかに日常生活に戻れることがほとんどです。 - 施術が簡便
PFC-FD療法は手術や入院といった負担がなく、注射を受けた日に歩いて帰ることも可能です。
ただし、PFC-FD療法はその抗炎症作用で痛みが引いている間に運動療法を取り入れることで効果を最大化できるため、施術後に運動療法の指導を受けるための通院が推奨されています。
PFC-FD療法のデメリット
- 自由診療のため治療費は自己負担
PFC-FD療法は新しい治療であり、公的保険適用ができない「自由診療」という枠組みのなかで行われています。
保険診療の場合、治療を受ける方の支払う費用は治療費の一部で済むのに対し、自由診療では全額自己負担となります。 - 効果にばらつきがある
PFC-FD療法は個人の血小板に含まれる成長因子の働きを活用した治療です。そのため、一般的な薬と違い効果にばらつきがあります。
個人の血小板やそれに含まれる成長因子の働きによって効果が変わるので、あまり働きが強くない方の場合には効果が薄かったり、逆に働きが強い方の場合は思ったよりも効果が出ると言ったことが想定される治療になります。 - 未発見のリスク
ご自身の血液を利用した治療法のため、拒否反応やアレルギーリスクは非常に少ないと考えられ、深刻な有害事象は報告されていません。
とはいえ、新しい治療ということもあり臨床データがまだ少なく、今後新たなリスクが発見される可能性がないわけではありません。
PFC-FD療法を受ける流れ
PFC-FD療法の流れをご説明いたします。加工の過程は厚生労働省の認可を受けた細胞加工センターでの製造工程を掲載しています。 このうち、患者様が当院へお越しいただく必要があるのは「採血」と「患部への注入」のみになっています。
- 採血
当院にて採血をいたします。患者様から約50mlの血液を採取し、厚生労働省認可の細胞加工センターにお送りします。 - 抽出(PRPの作成)
細胞加工センターに届けられた血液を、遠心分離機にかけ、PRP(多血小板血漿)を作成します。 - 活性化
塩化カルシウムを加えることによりPRP内の血小板が持つ成長因子を活性化させます。
この工程によってPRPから、血小板のもつ成長因子を活性化した液体「PFC」が完成します。 - セルフリー加工
「セルフリー加工」とは「無細胞加工」と訳され、作製されたPFCに残った細胞を専用のフィルターを使用して濾過することにより除去します。
なるべく成長因子が直接患部に届くようにこの処理が行われます。 - フリーズドライ
無細胞加工が施されたPFCを凍結乾燥します。凍結乾燥することにより長期保存(約6か月間)と輸送の簡便化が実現できます。
また、成長因子成分の含有量やその働きに対してこの凍結乾燥技術による影響はなく、生理食塩水で溶くことで元の状態へと戻すことができます。フリーズドライ後のPFCが「PFC-FD」と呼ばれる状態です。これで「PFC-FD」の完成です。 - 患部へ注入
採血からおよそ3週間後、当院にて患者様が来院するタイミングに合わせて凍結乾燥された「PFC-FD」を生理食塩水で液体に戻します。液体に戻した「PFC-FD」を患者様の患部へ注射することでPFC-FD療法は完了となります。